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名将たちの教育論 4

第1章 軍人たちの教育システム

第4節 士官学校の教育

有史がある紀元前600年ごろのギリシャの戦闘では、既に戦闘陣形を組んでチームプレーによって戦うように戦闘マニュアルが存在していた。単に武装人(man at arm)が群がって戦う時代から進歩していたのである。

 当然、陣形を組むには陣形内の指揮官に対する"戦い方"や"指揮の仕方"などの事前教育が必要であったし、陣形内の兵士の行動要領も事前訓練が必要であった。個人に対しても、部隊に対しても組織の上下左右の「協同動作」に関する事項は不可欠の教育・訓練内容であった。

それでは士官学校は存在したのだろうか?

アレキサンダー大王が出現するまでの名将たちは、貴族出身であり、一族の有能な人々から「家内教育」を受けて育った。アレキサンダーの父フィリップ二世は、戦術の父と称されるテーベの指導者エパミノンダスに差し出された人質として「奉公教育」を受けた。アレキサンダー大王も父フィリップ二世から5年ほど直接の軍事指導を受けた。

大王は世界で最初に士官学校を設立したと言われている。貴族の子弟で優れた人材を入学させる将校養成軍学校を創設し、セリューコスを初代校長にした。彼は大王の死後、セリューコス王朝(古代シリア、首都ダマスカス)の始祖となる。

 しかしローマ共和国および帝国時代のローマやカルタゴの名将、ハンニバルなどはすべて一族の「家内教育」と「奉公教育(著名人の書生)」が主体であった。なぜなら戦術は言葉で教育できない暗黙知の世界の学問であるからだ。戦術は職人技と見なされていたのである。

 近世になると今日的な陸軍士官学校や海軍兵学校ではないが、国王が設立する多様な士官学校が誕生した。例えばナポレオンは1784年にパリ王立陸軍士官学校に入校している。ちなみにフランスのサンシール陸軍士官学校は1802年にナポレオンが国立の学校として開校したものである。また、イギリス海軍は繋留した軍艦に王立海軍兵学校を開設していた。

 イギリスのダートマス海軍兵学校の公式的な開校は1902年であるが、前身の王立海軍大学(Royal Naval College)は国王勅許によって1694年に開校されている。

 軍事学校がこのような形で創設されたのは、軍事学が広義の技術に属する戦略・戦術、指揮・統率、部隊管理などの言葉や文章のみでは教育できないもののほかに、兵器などの工学や経理学などのような普遍的科学の学問の教育が必要になってきたからである。

 また新兵士の教育は、主として規律・協同という徳育と戦技、戦闘ドクトリンおよび野性的生存能力であって「技育」に属するものを大量生産的に教育する必要が生じてきた。それは国家が傭兵国家(King with mercenary)から武装国家(Nation at arms)に近代化を始めたからであった。

 日本においては、戦場往来の経験豊かな老兵が若武者に対して兵学書を参考資料にして、主として実戦体験の教訓を語って育成した。よく知られている"炉辺兵談"である。こうしてみると軍事教育法の本質は「徒弟教育」と断言して差し支えないだろう。

 近代的な陸軍士官学校について見るとアメリカのウエストポイント陸軍士官学校は前身がアメリカ陸軍工兵学校で1802年に士官学校となった。

 軍事高校や士官学校の教育の最大の特色は全員寮制で部隊のように編成されて生活し、教官、先輩、後輩の関係を大隊長、中隊長、小隊長、分隊長、戦友のように律して一種の「組織的な徒弟教育」を行なうことである。

 イギリスの陸軍士官学校は1741年創立の王立陸軍士官学校と1799年創立の王立陸軍大学校が合体して第二次世界大戦後の1947年に現在のサンドハースト陸軍士官学校となっている。

 ドイツの陸軍士官学校はフレデリック大王が7年戦争のあと1764年に創設した。数々の名将を輩出している。

 日本の陸軍士官学校が東京の市谷に開校したのは1874年である。

 世界で三つの著名な海軍兵学校の一つは王立海軍大学校を前身とする現在のイギリスのダートマス海軍兵学校(1863年に移設)である。

 次がアメリカのアナポリス海軍兵学校は1845年に開校した。三つ目は日本で、1869年に創設された海軍操練所が翌年に海軍兵学校と改名したものである。日本は海洋国家として世界に誇る「船乗り教育機関」を持っていたのだ。

 士官学校の教育において、究極的に学生に求めるものは

「戦場においての判断と決断は、何も頼るものがない。自分で考えよ」

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