連山は智恵(情報)と勇気(行動力)で世の中を変えるための読者参加型サイトです。
地球温暖化(1)温暖化の発見

地球温暖化は、今日最もポピュラーな環境問題である。今月開催されたハイリゲンダム・サミットでも、地球温暖化対策は、最も重要な議題の一つだった。その注目度の大きさゆえに、地球温暖化に関しては、全九回の連載で、詳しく論じたい。初回では、地球温暖化が世界的な関心となったプロセスを振り返る。

0. シリーズ「地球温暖化」の目次

第一章 温暖化の現状

第一節 温暖化の発見

第二節 温暖化の事実

第三節 温暖化の程度

第二章 温暖化の原因

第一節 温室効果と太陽放射

第二節 メタンミステリー

第三節 森林伐採と砂漠化

第三章 温暖化の影響

第一節 温度変化の影響

第二節 温度上昇の影響

第三節 問題の本質

1. 70年代は寒冷化が危惧されていた

現在、世界の気候学者は、地球温暖化に警鐘を鳴らしているが、70年代までは、彼らは、地球寒冷化を警告していた。日本の気象庁は、73/74年に気候変動調査研究会を設置し、十数年後には19世紀以前の寒冷期に戻ると予測した。CIAも75年に気候寒冷化を予測するレポートを発表した。日本の気候学者の中には、氷期の再来を予言するものまでいた [竹内 敬二:地球温暖化の政治学, p.11]。

以下のグラフを見てもわかるように、1940年から1976年にかけて、地表面の温度は、地球全体で下落傾向を示していた。寒冷化の傾向は、南半球よりも北半球で著しかった。

1880年から2004年までの地上気温の変化
1951-1980年を基準にした、1880年から2004年までの地上気温の偏差(縦軸単位は、1=0.01℃) [原資料: Global Historical Climate Network (2007) GLOBAL Temperature Anomalies in .01 C]

2. 寒冷化した原因

なぜ、1940年から1976年にかけて、地球の気温は下落したのか。IPCC第四次評価報告書には、以下のようなエピソードが載っている。

In the peer-reviewed literature, a paper by Bryson and Dittberner (1976) reported that increases in carbon dioxide (CO2) should be associated with a decrease in global temperatures. When challenged by Woronko (1977), Bryson and Dittberner (1977) explained that the cooling projected by their model was due to aerosols (small particles in the atmosphere) produced by the same combustion that caused the increase in CO2.

査読付きの学術雑誌の中で、Bryson and Dittberner(1976)は、二酸化炭素の増加が地球気温の低下と関連付けられるべきだと報告した。Woronko(1977)によって反論されると、Bryson and Dittberner(1977)は、彼らのモデルによって予測された寒冷化は、二酸化炭素の増加をもたらしたのと同じ燃焼によって生み出されるエアロゾル(大気内の微粒子)によるものだと説明した。

温室効果は、ジョゼフ・フーリエによって、1824年に発見されており、1976年にもなって、二酸化炭素濃度の上昇で寒冷化を説明しようとした科学者がいたとは驚きである。実際には、この引用にあるように、大気中に大量に放出されたエアロゾルが太陽放射を遮断することで、地表面の温度が下がったのである。

エアロゾルは、火山噴火などの自然現象でも放出されるが、1940年から1976年にかけての寒冷化をもたらしたのは、人間が放出したエアロゾルだった。なかでも、化石燃料の燃焼で発生する硫酸エアロゾルは、アルベド (albedo 入射光エネルギーに対する反射光エネルギーの比)が高く、最大の元凶だったといってよい。エアロゾルは、雲凝結核(Cloud Condensation Nuclei)となって、雲の形成を促進する働きもあり、雲量増加によるアルベドの上昇をも惹き起こしている。

Aerosols also cause a negative radiative forcing indirectly through the changes they cause in cloud properties.

エアロゾルは、雲の性質を変えることで、間接的にも、負の放射強制力を発揮する。 

以下のグラフは、グリーンランドのアイスコアにおける硫酸イオンの濃度を赤と青の実線で、南極のアイスコアにおける硫酸イオンの濃度を紫の破線で描いたものである。

Sulphate concentrations in Greenland (Bigler et al., 2002, red line; Mieding, 2005, blue) and
antarctic (Traufetter et al., 2004, dash, violet) ice cores during the last millennium
左軸は、グリーンランドと南極のアイスコアにおける硫酸イオンの濃度。右軸は、北半球で人間活動が原因の硫黄の推定量。火山噴火の影響を平準化するために、10年移動平均を用いている。小さなグラフにおける緑色の棒グラフは、火山噴火による硫黄の推定量 [IPCC (2007) Palaeoclimate, p.480]

このグラフを見てわかるように、ヨーロッパと北米の近くにあるグリーンランドでは、20世紀の後半に、人間活動が原因である硫酸エアロゾルの影響が急増しているのに対して、南極にはその影響がほとんどみられない。これで、なぜ寒冷化が、南半球よりも工業化が進んでいる北半球で顕著であったかがわかる。

人為的に排出される硫酸エアロゾルは、近年急激に減っている。エネルギー源の主流が、石炭から石油へ、石油から天然ガスへと移行するにつれて、燃焼時に生じるエアロゾルが少なくなった。また、70年代以降、先進工業国で公害規制が強化され、以前ほど大気汚染がひどくなくなった。大気汚染問題を解決しようとする人類の努力が実を結び、澄んだ美しい空が戻ってきた。しかし、皮肉なことに、この環境改善のおかげで、地球温暖化という別の問題が出てきた。

では、地球温暖化を防ぐために、今中国がやっているような大気汚染を許容するべきだろうか。答えはもちろん、否である。大気汚染は健康被害をもたらすだけでなく、《悪い寒冷化》をもたらすという点でも好ましくない。太陽放射が、エアロゾルによって妨害されることなく、地表面に届き、地表面を暖めることは、《良い温暖化》であり、この《良い温暖化》と温室効果ガスが結果として惹き起こす《悪い温暖化》は区別されるべきである。《良い温暖化》と《悪い温暖化》あるいは《良い寒冷化》と《悪い寒冷化》がどう違うかは、このシリーズでまた詳しく説明したい。

3. 地球温暖化が国際問題となる

80年代になって地表面の温度が上昇し始めると、気候学者たちは混乱し出したが、やがて、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスにより地球が温暖化しているという点でコンセンサスが形成されるようになった。

1985年に、オーストラリアのフィラハで、国際科学会議(International Council for Science:ICSU)、国連環境計画(United Nations Environment Programme:UNEP)、世界気象機関(the World Meteorological Organization:WMO)の三者が主催する「気候変動に関する科学的知見の整理のための国際会議」が開かれ、この会議で、人間活動が原因で地球が温暖化しているという事実が確認され、その防止が国際的な課題であることが初めて宣言された。

会議後に記者会見を開いたが、記者たちも何を書いていいのかに戸惑い、ほとんど記事はでなかった。マスメディアの世界ではまだ「温暖化」というテーマはなかった。

[竹内 敬二:地球温暖化の政治学, p.16]

オゾン層保護では、ヨーロッパ以上に熱心に取り組んだ米国も、地球温暖化問題に関しては、不確定性が大きいとして、当初からきわめて消極的だった。1988年にUNEPとWMOが共同で、IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change 気候変動に関する政府間パネル)を設立したが、竹内敬二氏によると、これは、科学者主導で提案が出されることに、政府が歯止めをかけられるようにしたいという米国の思惑が絡んでいたとのことである [竹内 敬二:地球温暖化の政治学, p.21-22] 。

設立当初の意図が何であれ、組織というものは、いったん作られると自己目的化するものである。IPCCは、1990年に第一次評価報告書を出したのを皮切りに、今日に至るまで、地球温暖化の脅威とその対策の必要性を世界に訴え続け、そして、マスコミがこれに呼応したことで、今では、地球温暖化は、最もポピュラーな環境問題として扱われるようになっている。

2007年は、IPCCが第四次評価報告書を公開する年である。IPCCには三つの作業部会があり、気候システムと気候変動に関する科学的知見を評価する第一作業部会は、5月に第四次評価報告書の全文をウェッブ上で公開した。このシリーズには間に合いそうにもないが、気候変動に対する社会経済システムや生態系の脆弱性を評価する第二作業部会、温室効果ガスの排出抑制と気候変動の緩和策を評価する第三作業部会の報告書も今後ウェッブ上で全文が公開される予定である。このシリーズでは、公開された最新レポートへの論評を中心としつつ、地球温暖化の問題を考えてみたい。(続く)

関連書籍紹介
書名 IPCC地球温暖化第三次レポート―気候変化2001
媒体 大型本
著者 IPCC 他
出版社と出版時期 中央法規出版, 2002/07
書名 地球温暖化の政治学
媒体 単行本(ソフトカバー)
著者 竹内 敬二
出版社と出版時期 朝日新聞社, 1998/06

トラックバック(0)

このブログ記事を参照しているブログ一覧: 地球温暖化(1)温暖化の発見

このブログ記事に対するトラックバックURL: http://renzan.org/mt-tb.cgi/439

【月別アーカイブ】

【連山携帯サイト】

連山携帯サイトQRコード
携帯アクセス解析


Powered by Movable Type 4.27-ja