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中国経済の問題点と豪州との経済的相互補完性

1. 本作の主題及び仮説

 21世紀はアジアの時代といわれる。人口やGDPで世界の大部分を占めるこの地域が、世界の経済的牽引車となるという主張である。現在の中国沿岸部の発展を見ていると、この主張にも一理あるように思える。しかし、仔細に見ていくと、この地域の抱える矛盾は相当に大きく、楽観を許さないどころか、大波乱を迎える可能性もある。

現在の中国政府共産党は、安全保障と社会の秩序維持のため、中央集権圧制支配をしいている。それに反して上海や香港といった沿岸部は交易による利得を求める。問題は、相対的に発展を遂げる沿岸部と取り残される農村、国営企業、自然環境破壊にさらされる内陸部との矛盾が利害対立を起こし、破綻を迎えないかということである。            
反面、アジア太平洋圏には、いくつかの島国もしくは海洋国家(台湾、シンガポール、オーストラリア(豪州)、NZ等)がある。これら島国の方が、日本と相互補完性、親和性が高く、提携先として将来性があり、経済圏樹立の可能性があると考える。
本作は、近未来におけるアジア太平洋地域の中で、中国の姿を政治的、経済的及び社会的観点から現実的に予測し、いかに構造的な問題が大きいかを明らかにし、日本は、この地域の中で海洋国家の代表として豪州といかに相互補完性が高く、経済圏を樹立していくべきかを考察するものである。

2.中国経済の現状

ビジネス誌にも中国が特集されることが多く、いわく「世界の工場」いわく「中国人にいかに売るか」いわく「対中貿易で復活する日本経済」等猫も杓子も中国である。中国に関しては、19世紀から今日に至るまで、パールバックの「大地」や5000年の歴史あるいは儒教や律令制、漢字といった日本の文化の発生地として、常に羨望の的であるという見方が強く存在した。アメリカが19世紀の門戸開放、機会均等を唱えていたことから現在に至るまで中国に過大な支援をしているのも、ある意味でこのような見方に基づいたものであろう。しかし、その反面、上述のような矛盾が大きく存在し、かつ、中国の歴史は王朝交代の歴史でもあり、分裂と統合そして内乱の歴史でもあった。果たしてどちらの見方が正しいのであろうか。過度の期待や思い入れを排して、冷徹かつ、客観的にこの国の行く末を見据えることが、アジア太平洋圏の将来を見通すことにつながる。

<参考>

東亜日報記事「中国、不動産バブル崩壊の兆し」
http://japan.donga.com/srv/service.php3?biid=2006050623798

中国の不動産バブルが崩壊する兆しを見せている。首都北京のマンションの売れ残り率が60%に達している上、最近、銀行の融資金利が大きく引き上げられたことでバブルがはじけるのではないかという分析が出ている。このような情勢の中で韓国人による中国不動産投機の動きは日増しに拡大しているため、ともすれば酷い目に合わされかねないという指摘だ。
▲北京新築マンションの60%が売れ残り〓5日、北京不動産取引管理網(www.bjfdc.gov.cn )の公示資料によると、先月末現在、新築中のマンションのうち10万9106戸が売れず、売れ残り率が59.1%(面積基準)に達している。この統計は、中国建設部が3月に地域別マンションの需給現況を調べ、インターネットに公示するよう指示を出したことにより発表された。
北京のマンション売れ残り率が高い数値を示したことを受け、官営の新華通信のインターネット版の新華網など中国のマスコミもバブル崩壊の懸念を報道し始めた。
韓国大使館の申鳳吉経済公使は、「建設部がマンションの分譲現況をインターネットに公示したことと、中国のマスコミが売れ残りの数値を具体的に明らかにしたことは、いずれも加熱した不動産熱気が一気に冷めることを防いで軟着陸させるための措置だ」と述べた。
▲中国、不動産融資だけで368兆ウォン〓中国中央銀行の人民銀行によると、昨年末、中国の不動産融資は3兆700億人民元(約368兆4000億ウォン)に上った。1997年の融資額(200億人民元)の153倍の水準だ。このように不動産融資が急増したのは、住宅価格の70%までの融資を受けられるためだ。
インターネットポータルの新浪がこのほど、ヌリクン(ネチズンを指す純粋な韓国語)1万5000人を対象に調査した結果、住宅担保融資を受けた人の31.8%は月の収入の50%以上を、融資の返済に充てていることが分かった。
▲韓国人の「問うな投資」、危険な水準〓それにもかかわらず、韓国人の中国不動産への投資は増える一方だ。中国現地に進出した不動産仲介業者たちによると、70~150坪型の高級マンションを中心に投資熱気が高い。ある仲介業者は、「韓国人が全体物量の10~20%を買ったマンション団地もたまにある」と伝えた。
輸出入銀行によると、韓国人の中国不動産への投資は、01年73万ドルから昨年3134万ドルに暴騰した。今年も3月まで1947万ドルが投資された。個人投資はほとんどが届け出られていない点を勘案すれば、実際の投資額ははるかに多いものと見られる。
今まで上海の経済を支えてきたのは不動産バブルだ。
このバブルが弾ければ、中国全体に及ぼす影響は計り知れないものがある。
不動産バブルが弾けて建設ブームが終わると突貫工事を低賃金で支えていた地方からの出稼ぎ者の仕事が無くなる。

沿岸部と内陸部で拡大し続ける貧富の差や、出稼ぎの場がなくなった時に8億いるという農民の不満が一気に爆発する可能性もある。
 
 当たり前だが、資本主義経済では、オランダのチューリップ球根事件、イギリスの南海泡沫会社事件のように、バブルは必ず発生する。バブルが経済を牽引する効果もあるから、悪い訳ではない。重要なのは早目に的確に対処することだ。上手くいくかは別として、政府が常に監視し、ここぞという時に動くことで、マイナスのインパクトを和らげる訳である。しかし、最大の問題は、その見方は中国政府には当てはまらないことだ。銀行に、膨大な不良債権問題があるのはよく知られているが、経済好調なので少しづつ問題を解決していると考えていたが、甘いようだ。中国では、モラルハザードが広範囲に発生しているという。しかも、悪いことに、構造的なものである。

 先ず、地方政府が、起業と公共投資を企画する。融資元は銀行になる。しかし、事業の実態は赤字。不良債権化必至(現時点でその規模は「公式」でGDPの4分の1、日本の4倍である。)である。その結果、銀行も赤字に直面するが、この赤字を政府が補填しているそうだ。背後に共産党政府の利権構造があるのは明白だ。

 すでに、中国経済バブルのお蔭で、世界はインフレ化してきた。米国は、膨大に積みあがったドル債の価値を下げるから、インフレを容認しているようだ。
 しかし、いつまでも、インフレ化を放置できまい。中国政府が投資抑制に舵を切れば、ドル圏経済は一気に不況に突入する。上述の発言を見ても、中国政府は、このことを十分理解している。しかし、コントロールする術が無いようだ。政府は銀行に対して融資抑制ができない状態らしい。そうなると、バブルは限界まで膨らむ。ハードランデイングは避けられない訳だ。と言うことは、長期的に眠りかねない現物投資は避けざるを得ない。破綻の前に、濡れ手に粟のビジネスでできる限りお金を稼ぐしかない。バブル破裂で貧乏籤を引かされないためには、どうすべきか、熟考が必要だ。このように、中国経済はバブルが大きくなりすぎて、
ハードランディングすると言ったシナリオが発生し、元の切り上げなどといっていられなくなる可能性も十分に存在している。この時、元の切り下げ等の対策を取らず、アジア通貨危機のときのような痩せ我慢をした場合、どうなるかは不確定ではある。不動産バブルがはじけると金融危機が起こり、それが国有企業の経営危機、財政破綻、大量の資本逃避、外資の流出につながる危険がある。
 日本やアメリカなら3%成長でも「好景気」といってよいが、中国経済は公称の9%(嘘だと思うが)の成長率でも失業率が増え続ける。しかもそのほとんどは不動産、インフラ投資、輸出に頼っているような脆弱な構造であることを忘れてはけない。

(3)不安定要因の多さ
さらに、
① 失業率と貧富の差が非常に大きく、富まざる者の人口が膨大(数億人?)盲流となって、都市部に流入
② 水とエネルギーのボトルネックが深刻
③ まともな社会福祉制度がないため、高齢化に対応できない
④ 国有企業や金融部門の改革が進まない
⑤ 経済の外資依存度が高すぎる(輸出の半分は外資系)
⑥ 技術レベルが低く、国際競争力のあるソニーやホンダに相当する国内企業(外資除く)は少ない
⑦ 一党独裁により、汚職の浄化機能が働かない
⑧ 法治でなく人治、ルールが突然変更される
⑨ 米国、日本、台湾など投資と貿易相手国と多くの摩擦、安保問題を抱えている
⑩ 農村や内陸部の改革が進まず、膨大な不良債権と化している
⑪ 日本や先進国との間で人の移動自由化は民族問題、犯罪発生を生むため不可能

といった、内外の不安定要因を多く抱えている。

13.環境破壊

さらに環境の問題がある。今後数十年を経ずしてユーラシア大陸内陸部は環境破壊により、人類の生存が難しくなる地域が増大すると推定される。例えば、中央アジアのアラル海の2/3は農業用水、工業用水の使い過ぎによって干上がってしまって、砂漠になってしまっている。中国では、北京の北、天安門から70キロの所に砂漠が出現している。すなわち地球の温暖化に伴って、中国においては砂漠が急速な拡大を見せているわけであり、北から南へ砂漠がどんどん下へ降りてきているのである。
 研究者の中には、中国では今後50年以内に3千万人の環境難民が発生すると考えている者もいる。中国の北部一帯は全部地下水の枯渇に直面しており、北京は既に、59メーター掘らないと地下水が出てこない。どんどん地下水を組み上げているから、年間1.5メートル位、地下水の水位が低下している。中国の砂漠の拡大スピードは、一年間に2460平方キロ。これを1秒間に直すと78平方メートルずつ、全中国で砂漠が拡大している。1998年までに砂漠化した土地の面積は262万平方キロ。日本の面積の7倍位が、もう砂漠になってしまっている。砂漠は北京へ進撃を続けているが、1年間に3.4キロメートルずつ進撃している。つまり、天安門まで70キロだから、このままいくと、恐らく30年から40年で北京は砂漠化するであろうと考える。

14.経済発展と不安定要因のバランス

このように歴史的、構造的さらに環境の観点から考えても中国の経済発展は膨大な不安定要因に相殺され、いずれ失速していくと考える。経済発展と不安定要因のバランスがいつ崩れるかを注視する必要がある。既に北京などの都市部では、失業者や農民のデモが行われているという。中国史を見ると、時の政権が衰退すると必ずこのような民衆による乱が起きていることを忘れてはいけない。共産党政府高官はこれを予測しているらしく、子弟を海外に移住させたりしている。また、優秀な中国人であればあるほど、日本やアメリカに移住する傾向があり、私が勤務する会社でも彼らを雇用しているし、上記は彼らから話を聞いて得た結論だ。
さらに、本質的に見て、近代そして、現代の根源的価値とは何かというと情報(ソフト)の支配だ。土地支配はあくまで中世の価値なのだ。英国が小さな島国ながら世界帝国を築けたのはこの情報を支配したからだ。中国はそのランドパワーの性質上、膨大な版図を維持するため、高コスト体質であり、そこのこと自体が、衰退や内部崩壊の要因なのだ。ランドパワーが経済発展できない本質的問題はこの版図支配コストの高さだ。これは、旧ソ連の崩壊が参考になる。このような観点から、上海や香港といったシーパワーがいつまで北京の支配に従うか分からない。そこが最大の問題なのだ。中国の実態は、外資の経済植民地に近く、何らかの要因で外資が逃げ出せば、悲惨な状況になるだろう。それがいつかを予想することは困難だが、中国政府は威信をかけて、08年のオリンピックまでは矛盾の表面化を避けるはずだ。

15.日本企業のリスクマネジメント

日本企業には中国ビジネスで出遅れてるいところは多い、あるいは、欧米の経営者に比 
べて、1980年代の中国投資ブームの経験から二の足を踏んでいる、という分析もある。
このようなリスクが存在する中国市場に対して、日本企業はいかに向き合うべきか。

はっきりいえることは、日本の企業や経営者の多くは、リスク判断が甘いどころか、リスクコントロールという概念すらないということだ。進出時には「皆が進出しているから」という雰囲気で進出してしまい、撤退時には、「今までの投資が無駄になる」とか、「責任問題になるから」などという理由で撤退が遅れがちになる。これは、太平洋戦争開戦にいたった過程(バスに乗り遅れるなといってドイツと同盟)と、終戦を決断できなかった経緯と全く同じだ。よって、日本人は中国市場の幻想を捨て、投資を勧誘する時は甘言を弄し、いざ利益を上げると、言いがかりをつけて課税するという慣行がなくなるか、構造的問題を理解し、冷徹にビジネスチャンスと撤退の時期を判断する情報をもたない限り、手を出すべきではないと考える。先物取引と同じか、それ以上のリスク管理が求められるのだ。あるいは、投資は行わず、その都度決済できる貿易にのみ限れば、傷は浅くて済むだろう。

16.海洋国家間経済圏

世界経済は第二次大戦の反省から保護主義を廃して、WTOに代表される多国間協議の枠組みを構築した。この枠組みは今後も当然維持されるべきではあるが、より「共通利益」を有する国家、地域間の結びつきが強くなり、重層的な構造となっていくであろう。近未来において、日本も独自の経済圏を早急に構築する必要がある。
ここで、地域経済圏を構築する上で農産物の輸入が常に問題になる。農家は自民党の支持基盤であり、「抵抗勢力」の票田であるから、話は簡単には進まない。抵抗勢力を駆逐できたという前提で話を進めたい。なお、抵抗勢力を駆逐するには、一票の格差をゼロにすることが必須である。難しいことではない。最高裁が「一票の格差がある選挙制度は違憲」と判断すればいいだけである。これにより、主に農村部を地盤とする抵抗勢力は半減することになる。

現在の国際経済の枠組みを見ていきたい。
「多国間の貿易自由化が困難を来している一方で、それを補完するように二国間ないし地域的枠組での自由化があらためて脚光を浴び、また実際に新たな自由貿易協定が次々と交渉され締結されている。多国間自由化の重要性は引き続き変わらないものの、21世紀序盤は、多国間自由化を二国間・地域間自由化が補完する時代、あるいは後者が前者をリードする時代になるものと思われる」(日本貿易振興会「世界の主要な自由貿易協定の概要整理調査報告書」2001年7月)。

 現在、自由貿易協定(FTA)をめぐる動きが加速している。日本は2002年1月、シンガポールとの間に初のFTAを締結し、メキシコとの間でも、産学官による共同研究会がFTAの可能性について検討している。また、韓国との間で、FTAの具体的内容を議論する産学官の共同研究会が発足し、2年以内を目途に報告書をまとめ、それを受けて政府間交渉に入るかどうかを判断する予定である。
 東南アジア諸国連合(ASEAN)との間では、2002年1月の小泉総理訪ASEANの際に、「日・ASEAN包括的経済連携構想」を提案し、「日ASEAN経済連携強化専門家グループ」等の場を通じて、構想を具体化するための作業を行っており、ASEAN+3の「東アジアスタディグループ」でも、東アジア自由貿易圏の可能性も含め検討中である。しかしそこには、日本の農産物をはじめとして幾つもの障壁がある。
 一方、中国は日本に先駆けてASEANとFTAを締結する見通しである。

一昨年報告された「平成14年版通商白書」では、対外経済政策推進の枠組みは、WTOにおける多国間の取組みを中心としつつ、これを補完するものとして、自由貿易協定(FTA)/経済連携協定(EPA)のような地域、二国間の取組みも活用した多層的なものとなっているとして、「我が国が自由貿易の利益を最大限に享受し、経済の活性化に結びつけていくためには、多層的な枠組みを戦略的かつ柔軟に活用していくことが必要である」と分析した。通商政策を発展、維持する中で、WTOにおける多国間の取組みを維持しつつ、これを補完するものとして、FTAのような地域、二国間の取組みも活用した多層的なものとなっている。
 従来日本は、世界経済が保護主義に走り、第二次大戦に至った反省から、WTOを中心とした多国間協議による対外通商政策を推進してきた。自由貿易はシーパワーの生命線であり、新世紀を迎えた今日においても、日本にとってWTOの役割が重要であることは言うまでもない。しかしながら、WTOでは加盟国数が増加し、交渉項目も多様化した結果、機動的な交渉や合意形成が困難なものとなる傾向が見られる。また他方において、日本の対外経済政策を取り巻く環境は、近年著しい変化を遂げている。そうした環境変化の1つとして、経済連携強化に向けた諸外国の積極的な取組みを挙げることができる。
国際経済の動きを見ると、米ソの冷戦構造崩壊以後、欧米諸国は新たな国際経済システムを模索する中で、「より共通利益」を有する国家を束ね地域経済統合の動きを推進させた。EUの単一市場化(1992年)、NAFTA発足(1994年)を中心に、欧米諸国は、より高度な貿易投資の自由化・円滑化、域内の制度調和により市場の確保と構造改革の加速を通じ、人物金の往来自由達成から、域内及び自国の利益を極大化しようと努力してきた。1999年のWTOシアトル閣僚会議の決裂は、多国間での自由貿易推進の難しさを白日の下にさらし、世界的な地域経済連携強化の流れをさらに加速化させた。こうした中、従来経済連携の動きに関心がなかった日本周辺地域においても、経済連携推進への動きが加速されつつある。

 バブルの後遺症にあえぐ日本経済を再活性化させるためには、成長分野や比較優位にある分野において国内市場と海外市場におけるビジネス環境を整備していくことが不可欠であり、こうした観点から常に最適な対外経済政策を選択し、立案・実施していく必要がある。
ここで、上述の国際経済環境の変化を踏まえれば、日本がWTOという場にのみ依存することは、自由貿易維持という国家の生存基盤を維持する上での十分条件ではなくなりつつあることは確かである。よって、WTOは今後も対外通商政策の主要な窓口、交渉の場であることは当然であるが、これを補完するものとして、地域あるいは二国間における枠組み、協定等を、柔軟かつ長期的観点から大局的にもFTAを活用した多層的なシステムとすることが必要だ。この達成により、日本の主要な関心事である輸出先、輸入先へのアクセスが良くなり、域内での人物金の往来自由から新たなビジネスチャンスが生まれる。さらに、これらの国々との通商関係を深めることにより、WTOの場(多角的貿易交渉)においても味方を多くし、発言力の増大に寄与する。

このような観点から、アジア太平洋圏を重層的に考え、中国、朝鮮半島を中心とする大陸国家と台湾やASEAN、豪州に代表される海洋国家を考えた場合、前者をランドパワー後者をシーパワーと考えることができる。日本の場合ここでシーパワーの国々を中心とし、日本・豪州を頂点とする経済圏を構成すべきである。これらシーパワー国は上述のランドパワー中国が抱える矛盾や問題点を抱えていないため、パートナーとして最適のみならず、経済発展の可能性も秘めている。日本との相互補完性も強い。世界の海を支配した勢力(米国)は世界の陸を支配した勢力(ソ連)に勝るのは米ソ冷戦で実証されている。日本もこの例に学んで、島国のメリットを生かして、海洋国家との連携を目指すべきである。

また、これら国々は発展段階こそばらばらであるが、各国とも今の日本にない可能性を持っている。これらの国々と提携して経済圏を構成するメリットは非常に大きいと思われる。さらに忘れてはいけないのはこの地域は親日的な国家が多く中国への対抗の意味から日本のコミットメントを求めているのである。距離的な問題は、この圏内はほとんどが海運の使用でまかなうことができる。時間的には陸運の方が有利だが、コスト的には海運が数段優位性をもつからである。

本作では、投資先、提携先として、豪州との経済圏樹立の可能性を検証したい。

17.豪州経済の概要

(1)経済の二面性
①経済構造の二面性
 第一の特徴としては、農産物や鉱産物などの第一次産品の輸出国としての側面と第三次産業の割合が圧倒的に高い先進国型の産業構造を持つ側面との二つの顔を持つということである。 GDPに占める農林水産業の割合はわずか3%に過ぎないが、商品輸出に占める農産物、鉱産物の比率は76%(1993年ABS提供)もあり、海外からは農業国と見られがちである。一方、 産業別労働人口割合を見ると農林水産業等の一次産業6%に対し,サービス業は80%(1994年ABS提供)と世界的に見ても非常に高い数字になっている。

②製造業の停滞
  植民地時代は、イギリスから遠く、世界市場から孤立していたし、第一次世界大戦後は安全保障政策として製造業を中心に保護主義政策が取られた。その結果、国際競争力は強いものとはなっていなかった。 60年代に入ると資源ブームによる賃金上昇が製造業にも波及し、また、近隣の日本、東南アジア、米国からの製品輸入が阻害的に働き、製造業は停滞している。
(2)農業

①農業の概要
  豪州大陸は、世界で最も乾燥した大陸であり、年間降水量は460mmと少なく、また、土地も痩せているため、自然環境は必ずしも農業に適したものではない。
  地域別に生産物を分類すると、沿岸部に位置し、最も雨が多い「多雨」地帯では、酪農、さとうきび、子羊の飼育などが集約的に展開されている。大分水嶺山脈の内側に位置する「小麦、羊地帯」では、平均面積は多雨地帯の2倍有り、小麦、大麦と羊や肉牛も取り入れた「混合農業」が行われている。日本に対する最大の小麦輸出国でもある。さらに内陸の「牧畜地帯」は年間降水量は400mmしかなく、穀作もできないため、羊と肉牛を飼育している。

②農業の特徴および構造変化
  豪州の農地面積は4億9千万平方キロメーターで国土の64%を占め、1農場当りの平均面積は3,100haと日本の2,000倍以上の面積となっている。戦後50年代まで、農業部門は、豪州の経済を支える重要部門としてGDPの約30%、商品輸出額の約80%を占めていたが、現在でも商品輸出額の約20%を占めており、依然として重要な産業部門である。中でも、牛肉は世界最大の輸出国であり、国際市場に占める割合は26%もある。

(3)鉱物資源
93年ベースで商品輸出の46%を占め、豪州の輸出の牽引車的役割を果たしている。1850年代のゴールドラッシュで金生産は世界の4割を占めたが、その後、鉱業は経済発展の主軸とならず、再び脚光を浴びるのは1960年代まで待たねばならなかった。
  1950年代以降に鉄鉱石、ボーキサイト、石油が相次いつで発見され、1958年には鉄鉱石の輸出が解禁された。また、日本は急速な経済成長を遂げつつあり、豪州の鉱物資源の輸出は急拡大していった。現在、60種類以上の鉱物を採掘しているが、埋蔵量で、ボーキサイト、鉛、亜鉛、ウラン、鉄鉱石、鉱業用ダイヤモンドは世界第一位、石炭は第3位となっている。 


18.日本との補完性
いかがであろうか。豪州が農業国、鉱物資源国であり、日本が技術立国である以上、相互補完性が非常に高いことが良く分かる。人口も2500万前後で白人が主流であり中国が抱える構造的問題点もない。食料安全保障の観点からも、リスク管理が過度に必要な中国に対する投資よりは、日本企業はこの国に対する投資を活発化し、政府もFTA締結からさらに進んで経済圏を樹立し、シーレーン防衛のための安全保障の枠組みまでも構築すべきと考える。BSEの影響で輸入禁止された米国産牛肉の代替が豪州産だったことはこのような観点から、非常に意義深いことなのだ。FTA締結のネックは自由化を恐れる農民をかかえる、農産物自由化であろう。自民党農水族の英断を促したい。
以上

<参考文献>

ニューズウィーク2004年2月4日号記事 バブル警報 中国経済はメルトダウン前夜?
・バブル警報 中国経済はメルトダウン前夜?
  ・株式 熱い投資ブームの甘い罠
  ・新規公開株の人気が高まる中国企業の危うい内情
  ・対中ビジネス 日本企業「中国頼み」の不安
  ・前代未聞の中国特需に沸く日本のリスクシナリオ
2004年4月5日の日本経済新聞の記事
http://parts.nikkei.co.jp/sp2/nt75/20040405AS2M0501A05042004.html
朝鮮日報記事
http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2004/04/29/20040429000095.html
全人代に見る中国の定点観測
http://homepage2.nifty.com/INCDclub/clm2004/clmChinaCongress20040306.htm

トレンドウォッチャー
http://www10.plala.or.jp/tika-infre/torend.html

(1)中国現代化の落とし穴―噴火口上の中国 何 清漣 (著),

(2)やがて中国の崩壊がはじまる ゴードン チャン (著)

(3)中国経済 超えられない八つの難題 「当代中国研究」論文選 程暁農 (編集)
 (4)中国のいま、3年後、5年後、10年後 高度成長か?大波乱か?宮崎 正弘 著

日本貿易振興会「世界の主要な自由貿易協定の概要整理調査報告書」2001年7月
「平成14年版通商白書」
豪州の経済
http://www.interq.or.jp/tiger/abcabc/aust04.htm
豪州の米作
http://web3.incl.ne.jp/matsuura/geographic06.htm
豪州の穀物
http://www.australia.or.jp/seifu/news/japanese_resources/pdf/05_agriculture.pdf

文献:中国経済がダメになる理由

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