第一巻 第一章
文献:キュロスの教育 (西洋古典叢書)人は誰かに支配されそうになった時、支配しようとする側に反抗するものである。しかし、言葉の違う多くの種族を支配したキュロス(ペルシア大王 前559-530年)にとって、人を隷属させる事は困難では無かった。彼は領地全ての者を恐れさせた。しかも、彼は人々の心に自分を喜ばせたいという願望を引き起こすことが出来たので、人々は常に彼の意思によって導かれることを欲した。彼はこのような「人を支配する賢明な方法」を、どのような教育で得ることができたのだろうか。彼の人生はどういうものだったのだろうか。
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』大キュロスより
第一巻 第二章
キュロスは、ペルシア王カンビュセスを父とし、故メディア王アステュアゲスの娘マンダネを母として生まれた。容姿は美しく、性格は心優しく、知識欲に溢れ、名誉心や忍耐も強く、勇気もあり、12歳位までペルシアの法律に従って教育を受けた。
ペルシア人は約12万人12の部族から成り、商人や無作法な人を排除した自由広場を所有し、その中に王宮と役所を設けた。役所周りの広場を、少年、青年、壮年、老年の4つに区切り、各グループには指導者が12人就いた。少年は学校で正義を学び、青年は法を遂行し、壮年は名誉ある官職に就いた。これらの課程を全て修了した者だけが、あらゆる徳を身に付けた最も優れた人として長老の仲間入りを許された。各指導者は彼らを指導し、不正者を罰した。最も良き青年部隊を育てた指導者と、彼らを少年時代に育てた指導者は、国民に褒め称えられた。少年は青年が、青年は壮年が指導者に強く服従するのを見てそれを学び、青年は王と狩猟に行くことで戦争の訓練をし、競技をすることでその技を磨いた。このような教育によって、国は強い軍隊の素地を作った。
| グループ | 少年 | 青年 | 壮年 | 老年 |
| 年齢(期間) | 16-17歳 (2年) |
18-27歳 (10年) |
28-52歳 (25年) |
53歳以上 |
| 指導者 | 長老から選出 | 壮年から選出 | 役所が選出 | |
| 毎日 | 指定日 | 毎日 | 指定日 | |
正義 指導者への服従 弓&槍以外に学ぶ事 |
忘恩の恥。節制。 飲食に対する忍耐。 他。 |
狩猟。弓&槍の競技。 他。 |
||
| 警備 | 就かない | 就く | 就く | 就かない |
| 遠征 | 行かない | 行く | 行かない | |
| その他 | 昼食はパン・オランダ辛子・水筒を持参。 |
未婚の者は自由広場で軽武装して眠る。 | あらゆる裁きを行なう。役人を選出する。 |
第一巻 第三章
キュロスは12歳の頃、同年齢の誰よりも明らかに優れて育っていた。槍を投げ、弓を射るのが同年齢では最も上手く、その名声を得ていた。また、「法が正義の基準(適法が正しく、違法が不正)であること」「自分が持ちすぎることが無いように配慮し、恩を返し、人に分配すること」「人の意を叶え、それを己の喜びとすること」なども身に付けていた。
そこで、彼の祖父アステュアゲス(メディア王)は、彼の母マンダネとともに彼を国に呼び寄せた。彼は祖父から与えられた美しい衣服を喜び、乗馬を学ぶ事を楽しんだ。マンダネが夫のもとへ帰る時、アステュアゲスは彼を置いていくように彼女に頼んだ。彼は乗馬を学ぶこと、多くを所有することを身に付けないで帰ることを母に約束し、ペルシアに留まった。
| メディア | 王が全てのものの支配者。鬘や化粧、装身具で着飾る習慣があり、食も豊か。 |
| ペルシア | 法が基準。平等の権利を持つことが正義である。 衣服は粗末で生活も質素。 山が多く馬を飼うのは困難。 |
第一巻 第四章
キュロスはすぐに同年齢の者と親しくなった。彼らの父親を訪れ、彼らの息子を愛していることを示して父親たちの心を捉えた。そして、父親達は何か王に求める物があれば、キュロスに頼むように息子達に言いつけた。キュロスもそれに良く応えた。
アステュアゲスもキュロスが自分に求めた物をよく提供した。というのも、祖父が病気になった時、祖父が死ぬかもしれないという恐怖から一時も泣きやまずに側を離れなかった事があり、また、アステュアゲスが夜に何かを欲しがると、いつも誰よりも早くそれが手に入るように手助けをしたので、アステュアゲスの心を完全に捉えたからである。
キュロスは「自分が行動する時には、その説明をする」「自分が判決を下す時には、他の者達の弁明を聞く」という教育をペルシアで受けていたので、それをよく実行した。好奇心が強く、常に人に色々尋ね、また自分が尋ねられた時にも即答することが出来た。青年間近になると言葉数も減り、分別のある穏やかな人に成長し、年配者と会うときはいつも赤面していた。
彼は苦手な競技種目では、「私の方が、仲間達よりも巧みにするだろう。」と言って、真っ先に競技を始め、負けると大いに自分を笑い飛ばした。そして、負けた競技種目の訓練を惜しまなかったので、乗馬や、狩場内での狩猟もすぐに上達した。
キュロスは、初めて狩場外で狩猟をした時、危険で大胆な行動で鹿と猪を仕留め、同行していた叔父のキュアクサレスや護衛兵に叱られた。彼が少年達にその獲物を分け与えた時「狩場の野獣は痩せて不具だったりするが、山や牧草地の野獣は立派で大きくて素早い」と話したら「狩猟の許可をもらえるよう王様を説得してほしい」と頼まれ、彼は祖父にそれを話す。が、許可は貰えず、悲しみ塞ぎ込んでしまう。彼の苦しみを見た祖父は、彼の為に少年を加えての大狩猟会を催した。祖父はその時がとても楽しかったので、以降、祖父は可能であればキュロスと出かけ、また彼の為に少年らも同行させた。
キュロスの初陣は15~16歳の頃でメディアとアッシリアとの戦だった。叔父のキュアクサレスが前進するのを見て彼はその先頭に立ち、捉えた敵を真っ先に打擲し、激しく追撃をかけ敵を圧迫した。他の者もその無謀な追跡に続いたので、アステュアゲスは息子とキュロスを案じ、軍を前進させた。それを見た敵軍は逃走した。祖父は勝利を喜んだが、彼の無鉄砲さには言葉を失い、戦死者達をいつまでも見回っている彼を怒った。
キュロスの父カンビュセスはこれを知って喜び、国の義務を果たさせるべく彼をペルシアへ呼び戻すことにした。
キュロスが帰国する時、祖父は彼に多くの贈り物をしたが、彼はそれらを仲間達に分け与えた。仲間はそれらをアステュアゲスに返したので、祖父は彼に送り返した。彼が「私が与えました者に、それらを所有することをお許しください」と伝言をつけて送り返すと、祖父はその通りにした。
また、別れの際、親族はペルシアの習慣に従い、彼の口に接吻をした。それを見ていたキュロスに心を奪われた一人のメディア人は、親族になりたいことを申し出、彼はそれを認めた。このメディア人の熱烈な言葉にキュロスは涙して笑ったという会話の詳細は37~38ページを参照。
第一巻 第五章
キュロスは帰国し、ペルシアで1年間少年のグループに所属した後、青年グループで10年を過ごした。彼は、義務遂行能力が高く、忍耐力も強く、年長者を尊敬し、役人に服従する点で他の者よりも秀でていた。
祖父のアスティユアゲスが死亡し、叔父のキュアクサレスがメディアの王位を継いだ。
当時のアッシリアはシリア、アラビア、ヒュルカニア、バクトリアを支配していた。メディアを支配すればその周辺諸国も支配できると思い、リュディア王クロイソス、カッパドキア王、両プリュギア、パプラゴニア、インド、カリア、キリキアに同盟を結ぶ為の使者を送った。
キュアクサレスはアッシリアの動きを知り、戦争の準備をしつつ、ペルシア政府(長老議員)、ペルシア王カンビュセスに援軍を申請した。それを受け、長老議員はキュロスを31000人(貴族1000人、軽装歩兵1万人、弓兵1万人、投石兵1万人)の軍隊の司令官に選出し、援軍をメディアに派遣する事を決めた。キュロスは神々に犠牲を捧げ、吉兆を得た後、貴族200人を選び、各々に貴族4人を選出させ、皆を集めて演説をした。そして貴族らに兵士達を選ぶことを指示し、メディアに向かうように言った。

第一巻 第六章
キュロスは家で神々への祈りを済ませ、遠征に向かった。父のカンビュセスも同行した。
空に吉兆が現れたのを見て、父は息子に話し始めた。
私は、お前が占い師無しに神々の助言や前兆を認識し、それに従うことが出来るよう教育してきた。困った時に諂わず、上手く行っている時に神々を忘れない。そして、友にも同様にしなければならないと。神の恵みを理解することは、幸せにつながる。己の義務を行う者が神々に恩恵を願う資格があり、努力していないことや不正について願ってもそれは叶えられないのは当然である。家族を養う者は立派だが、支配した者達をもそうすることは感嘆に値すると思わないか。また、立派に支配することは難しい。そして、支配能力の無い敵に、戦わず平伏するのは恥ずべきことだ。
食料
また、戦いにおいては、食糧がなければ指揮権は失墜する。必需品の供給が不確かであるならば、同盟を希望しているまたは帰属していない国からそれらを得る方法を、お前はキュアクサレスと考えねばならない。必需品の入手を先送りにしてはならないし、窮乏していない時に頼めばより多くを得られるだろう。
健康
健康への配慮も必要である。医者を同行させること。陣を張る土地においては、住人の肉体や顔色で土地の健康さが判断できる。また、兵の体を最良の状態で維持するように管理し、自分自身も暴飲暴食をせず鍛錬を怠ってはならない。
気力
気力は、一切の行動を取る上で、無気力より完全に勝っている。軍隊に気力を吹き込むにおいて重要なことは、自分が明確に知らないことを言わないようにすることである。もし、良い期待を抱かせそれを裏切れば、後に真実の希望を述べても説得できなくなる。
兵の服従
服従においては、服従する者を褒め称え、しない者を懲らしめるという「強制された服従」よりも、「自らすすんでする服従」をさせるほうがよい。部下達より賢明であると思われる事がその近道である。より多くを学び身に付け、人に予見できない事は神々から知ることで、賢明に成ればよい。
忍耐
司令官は、普段は部下に親切を示し、戦闘時においては、部下よりも寒暑や苦労、あらゆる事に耐えねばならない。自分の行動は全て見られているという自覚と、名誉が、司令官の苦労を軽減するのだ。
戦術
戦術においては、堅固な場所で自らは隠れて敵から見えない時に、または、自分が有利で敵が不利な時に襲撃せよ。秩序をたもっている時に無秩序にある敵を、武装している時にそうしていない敵を、起きている時に寝ている時を。そして、新しい戦術は敵を欺き優位に立つのに役立つ。また、弱っている時は防備を固めねばならない。もし、平地での戦になるのであれば、早くから準備することが肝心となる。兵士の心身を鍛錬し、戦術がよく研究されていれば、優位に立てるだろう。
神の助言
人は結果が不明のまま、最善を知らずに推測で行動するものだ。過去現在未来の一切を知っておられる神々の助言に背いて、自分や軍隊を危険にさらしてはならない。神々へ配慮する者が意見を求めた時、神々は前もってすべき事やすべきでない事を、その者に知らせてくださるのだ。
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