■電動バイクイベントにみる要素還元主義からの脱却
今回の電動バイクイベントを主催している「自由の代価」さんのブログによれば「解決策」の糸口が明らかとなります。
そこに示されている姿勢は、まず行動です。情報は自ら動く人のところにどんどん集まります。かつて、筆者が研究室で駆け出しのころ、自分が足で情報を集めていた若い頃を思い出しました。当時、西にその道の先駆者が居ると聞いては、そちらへ出かけ教えを請い、また、その先駆者から東にまた別のプロが居ると聞いてそこへ出向いて行きました。こうした東奔西走の行動力で情報を収集しますと、今流行りのインターネットや、従来の論文や業界誌や科学雑誌などに公開されている公式情報とは別の情報が集まります。また、同じテーマを追求する同志(ライバルということで敵視される場合もありますが...)ということで優先的に情報提供してもらえたりもします。机に座して、インターネットや論文、業界誌、科学雑誌で検索して収集する情報は鮮度的に古い可能性が非常に高く、さらに操作されている可能性もあります。自ら動くことにより発生するスピード、これこそが情報の鮮度や精度を高くし、判断する際の色々な収集情報の位置づけ、優先順位が見えてくるようになるのです。
次に、筆者が注目するのは、その熱意というか「思い」です。HONDAのNSF100のようなスポーツ志向のEVバイクを(おそらく将来は)「魔改造」してでも開発したいという熱意です。もの作りの原点と云うべきものかも知れません。それが、行動力の原点にあると筆者は見ています。
現在、大企業メーカにお勤めの理工系エンジニアも、何か「思い」があってメーカに就職されているのでしょう。自動車メーカであれば車作り、家電メーカであればもっと便利な家電製品作りなど、原点に戻って本来の熱意を取り戻す必要があると思われます。現在の要素還元主義で分断統治された組織では、理工系エンジニアの「思い」はともすれば無視されたり、はぐらかされたりして、「何でこんなことをやっているのだろう」と疑問を持ちつつ日々の「デスマ」をこなしているという情況かもしれません。自分を振り返ってみてもそれを自己否定したりすることはできません。ですが、自分の「思い」というか「原点」は大切にしたいものです。
そして、「自由の代価」さんの行動の原点のもう一つである、現代日本における「生存に対する危機意識」です。そして、その行動の結果彼が見出した「日本の製造業の壁」です。
曰く、「国内のEVパーツ屋さんは値段も高くモーター特性などもごく一部しか開示していないので設計に時間が掛かります」、曰く、「国内の多くのモーター会社、EVパーツ屋の致命的だなーと感じた点が値段が判らない!これに尽きます」、曰く、「個人でも色んな人に繋がっているので大切にしないと商売やっていけなくなると思うんだけどね。チャレンジと言うか開拓精神でしょうか?その辺りの失敗を恐れず1発目で全力を出す中国や韓国に製造業で負けるが解る」。いずれも、衰退しつつある企業の現状を正しく捉えていると思います。特に、筆者が、日々の研究開発において直面している高エントロピー情況に鑑みて、「日本企業が負けたのは人件費ではなく企業の速度で負けた」という指摘は、鋭く心に突き刺さりました。
さて、このような自作EVバイクですが、来る水素文明の青写真の中では、極めて重要な一角を占めることになります。
当面、バッテリーは供給やメンテ面の容易さから、鉛蓄電池を用いているようです。けれども、価格面で供給量が充実されれば、プリウスなどで用いられているニッケル水素電池の搭載も可能になるでしょうし、プラグインハイブリッドで急速充電対象となるリチウムイオン電池に換装してゆくことも想定できます。鉛電池を搭載していることは本質的に重要ではありません。
この電動バイクは、動力として従来の内燃機関(エンジン)の代わりに、モーターを搭載しています。これは、従来のバイク屋のテリトリーとしては少々勝手の違ったものとなるでしょう。石油が枯渇するのを待つまでもなく、現実的にガソリン価格が高騰していますので、いずれ、交通手段が自動車に依存せざるを得ない地方における移動手段として、電動バイクは広く普及することが期待されます。ですが、電動バイクが広く普及してゆくには二つの課題があります。一つ目は、その動力源であるバッテリーをどうやって充電するかというものですが、当面は各家庭に電力会社から配電されている系統電力、特に深夜電力を用いて充電することも想定されているようです。ですが、大規模災害を経験された「自由の代価」さんのブログによれば、再生可能エネルギーを一次エネルギーとする充電システムへの展開が有り得ます。この意味で、電動バイクは、水素文明移行への強力な手段となるのです。
土地が広く、太陽の恵みが期待できる地方では、太陽電池パネルを用いた充電システムが考えられます。また、近隣に河川や農業用水などの水路が整備されている地区であれば、マイクロ水力発電による充電システムが考えられます。温度差のある温泉地帯では、熱電素子を用いた温度差発電システムやスターリングエンジンを用いた発電システムによる充電システムが考えられます。風の強い地域では、風車による風力発電システムを用いた充電システムが考えられます。いずれにせよ、再生可能エネルギーを用いてバッテリーを充電するシステムですので、分散型エネルギーシステムになっても充分対応可能な汎用的な移動手段であるのです。しかも、この電動バイクは、「増槽」という形態で、バッテリーを積み替えたり、積み増したりする概念が組み込まれています。このバッテリーはEV車にも家庭用にも使えます。併用・汎用で使えます。電動バイク以外のユーティリティーにリンクできるようにします。「増槽」は、将来、水素吸蔵合金のボンベにもなりうるし、リチウムイオン電池になるかもしれません。あるいは、ハイドライド系の燃料を搭載した燃料電池となるかもしれません。今後、電力源としてのバッテリーの重要性は増すでしょう。その電力源として、電動バイクに搭載するバッテリーも重要な構成要素となるのです。
また、二つ目としては、電動バイクのメンテナンス体制です。現在、バイク屋さんでは内燃機関のバイクが販売されていますが、ガソリン価格が高騰すれば、一軒一台程度電動バイクが置かれていても、購入する人が出てくるでしょう。一軒一台でも配置されていれば、バイク屋さんの若い従業員が、電動バイクを習得したい、あるいは教えたいという際の教材となるでしょう。メンテを店員が実施できるように教育体制が整えば、数を普及させても問題がなくなるでしょう。何しろ、直流の大電流を流してモーターを駆動するシステムですので、感電などの事故に対する予防策や教育普及活動は必須になるからです。
云うまでもなく水素文明とは分散型の社会です。これまで支配的であった中央集権構造ではなくて、エネルギー源にせよ教育体制にせよ分散化された構造という点が重要です。少数者が統計的な多数を占める世界です。
今回、電動バイクイベントが関西地区で開催されるということも重要な要素です。東京以外の地方で、次の時代の産業の種になりそうな製品のプロトタイプ企画が生まれたことは極めて重要です。地方分権の本質とは、地方行政を預かる政治家に地方交付税の比率を変えて自由に使える金を沢山あてがうというったレベルの話ではないでしょう。そこに住み生活している人々のニーズに適合した製品やイベントが企画され実施されるかどうかということなのです。
そして、水素文明の構成要素となりそうな技術や情報は、HONDAのNSF100のようなスポーツ志向のEVバイクを魔改造してでも開発したい「自由の代価」さんのような行動する個人に蓄積されています。各地方にいる意欲ある個人に蓄積された各構成要素は、あきらかに炭素文明崩壊後の次の時代を担うことにやる重要な要素です。こうした構成要素は、何によって互いに繋がり合うのでしょうか?その点は、水素文明の構築の上で極めて重要です。
政治家が動いて、大学教授やメーカの人間を動かして、何か決め事をする、という時間スパンでは1年経っても否10年たっても何も起こらず、30年程度は掛かってしまうのではないでしょうか。実現したころには、安価で低スペックの某大陸製電動バイクが大量普及していて、出遅れた国内メーカは手も足もでない、ということになっているのではありませんか。今回の電動バイクは「自由の代価」さんの行動力によって、3ヶ月足らずの期間で実現しました。
政治家が動いて、といった従来の流れではなく、「連山」は電脳空間に、「遠隔教育」、「遠隔学習」の場を提供しています。この場は同時に、様々な規格を談合によって決定する場にもなりうるのです。この場に一日も速く実績を持って参加し、次世代EVバイクの規格を決定する談合に関与する、これこそが制海権なのです。ISO/IEC規格などで世界標準を作り、その標準に準拠しない製品を市場から締め出すと共に、ISO、ITUを始めとする標準化会議を開催する権利を独占して放さない欧米支配から、製造業を解放し、日本独自の企画で日本のためになる製品を製造するための対抗手段なのです。2010年度版の電動バイクの動作電圧は48Vであった、が2011年度版についてはパワーアップのため60Vにしよう、とかその道の専門家が集合してTV会議で話し合い、互いに談合すれば最適規格などすぐに決まってしまうのです。情報は行動する人のところへと、まるで呼び寄せるかのように集まるのです。そうすることで、最速で必要なものを短い期間で提供できるようになるのです。
行き詰まりを感じている大企業勤務の理工系エンジニアの皆様、「御蔵」(メルマガ秋月便りの購読が必須)を通じて、連山の提供する「遠隔学習」、「遠隔教育」の場へ是非お越しください。
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